大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)110号 判決

事実及び理由

一  原告主張の請求の原因一ないし三の各事実(特許庁等における手続の経緯、本願考案の要旨及び審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

二  そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。

(一)  成立に争いのない甲第三号証(引例)によれば、引例における座席12が別紙図面(二)の符号102、103、101の各部材によつて支持されていることは明らかであるが、右101の部材が板状のものか杆状のものか、また、右部材が引例記載のものの機体といいうるような機能を果すものかあるいは単なる座席の支持体であるか、の点については必ずしも明確でなく、成立に争いのない乙第一号証を参酌しても、右の点を確定することはできない。

原告は右101の部材は支持枠の一部であると主張し、被告は機体の一部であると主張する。そして、仮に右101の部材が機体の一部であるとすれば、102、103の各部材及び座席12の相当部分は、右101すなわち機体の後部でなく上部に存在することとなることが同号証第一図から明らかであつて、この場合には、前記本願考案の要旨と対比すると、引例における座席支持枠の取付方法は本願考案と相違することが明らかである。

しかしながら、前記審決の理由の要点によれば、審決は右を相違点としてあげていないこと、引例のサポート13を機体の一部としているが、右101の部材にはなんら言及していないこと、引例の座席支持枠の下端部がサポート13の後部下端位置に接続していると認定していることからみると、審決は右101の部材を座席支持枠の一部とみていると解するほかはない。

そこで、右101の部材を支持枠の一部とみることの当否はしばらくおき、これを前提として審決の適否を考えることとする。

(二)  審決は、引例の座席支持枠につき、「サポート13の後方下端位置から上部後方へ向けて斜めに支杆を延伸し、その支杆の上部先端位置で座席12を支持し、」「座席支持枠は、サポート13の後部下端位置から上向傾斜させ」と認定している(このことは前叙のとおり当事者間に争いがない。)ので、本願考案と引例の考案の一致点としては明記していないが、引例の支持枠(支杆)は上向傾斜に延設された点で本願考案の支持枠と一致すると認定したことは明らかである。しかし、前掲甲第三号証の第一図によれば、引例において審決認定の支持枠を構成する符号102、103、101の前記各部材のうち、102は上方から後方へ湾曲した部材であるが、101は水平の部材であり、103は垂直の部材であるから、これらが上向傾斜に延設されたとは直ちに認定し難いといわなければならない。ところで、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願考案は、支持枠を機体後部下方から上向傾斜に延設したことにより、「機体が上向きとなつても支持枠が上向傾斜状に設けられているからこれが接地することもなく終始安定した走行ができる」という作用効果をも奏することができるものと認められ、この事実からみると、本願考案において支持枠を「上向傾斜に………延設」するとは、これを機体後部下方に設けても、機体が上向きになつたときに接地しないような構成であるとみなければならない。しかし、引例における前記101の部材は地面に平行に形成されているものであるから、これを含む支持枠をそのまま機体後部下方に取り付けると、機体が上向きになつたときその後端が接地することは明らかである。したがつて、引例の支持枠は上向傾斜に延設されているとした審決の前記認定は誤りである。

(三)  前記審決の理由の要点によれば、本件審決は右の誤つた認定を前提として本願考案の支持枠のようにその下端部を機体後部の下方位置に接続するようにすることは引例の支持枠から当業者のきわめて容易にできたものである旨認定しているが、引例の構成のままの支持枠の下方取付個所を考えるだけでは、本願考案と同じ作用効果を奏する座席を得ることはできないものといわなければならない。

そうすると、その余の事項について判断するまでもなく、引例記載のものから本願考案がきわめて容易に考案できたとした審決には、その結論に影響を及ぼすべき違法があるとしなければならない。

三  よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

機体後部下方から上向傾斜に支持枠を延設してこれに座席を設けてなるパワーシヨベルにおける座席(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

図面(二)

<省略>

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